船木聡美からのレポート - 2008年5月
“幸せの連鎖”
タイラー基金の行っているカウンセリングプログラムのユニークな点は、心理士が専用の部屋を持たず、白衣も着ないで、ご家族や子どもの状況に応じて、ベッドサイドでお話を伺うというカジュアルなスタイルをとっていることです。これは成育医療センターの小児腫瘍科の医師と看護師たちの温かい雰囲気にヒントを得ています。また、入院生活は検査や処置が随時入るので、ご家族が必要なときにいつでも応じられるよう、予約制をとらず、各ご家族の事情が中心になる姿勢を貫いていることも特徴の1つです。こうして私はこれまでに30家族、86名の方々とお話をしてきました。
初回のカウンセリングで一番大切にしているのは、「ご両親が罪悪感を持つ必要はない」と伝えて差し上げるです。子どもが病気になった時点で、自分達に何か問題があったんじゃないか、あの時気付いていればよかったんじゃないかとご両親が苦悩されることはしばしばあります。よくお母さまから尋ねられるのが、「朝早くから子どもの就寝時間まで付き添ったほうが良いですか?」という質問です。その際には、「親御さんは十分良くやっていらっしゃるので、無理のない範囲で付き添っていただけば大丈夫ですよ」とお伝えします。疲れきっているご家族よりも、いつもどおりのご両親にお会いするほうが子どもは安心するのです。
このカウンセリングプログラムのもう1つの特徴をお伝えさせてください。このプログラムでは、心理士が小児腫瘍科に専属しているので、子どもが病棟に入院中のときだけでなく、退院後の外来やデイケア、あるいは検査や手術までご家族とともにいられることです。実は、小児がん病棟に専属の心理士がいるということは日本では初めてのことです。また、心理士が、医師、看護師のカンファレンスに全て出席しているので、子どもの状態と治療を全て把握した上で、関わりを考えることができます。ご家族が主治医に質問したいことがあればそれをともに整理し、子どもの食事に不安があれば栄養士に連絡をとり、経済支援を必要だと考えているのであればソーシャルワーカーに連絡することも可能です。このように、病棟でともに生活をしながら話を聞き、専門家につなげ、こどもの状態を把握しながらご家族の貴重な時間を有意義に過ごせるように最大限のサポートをしているのがタイラー基金のカウンセリングプログラムです。
さて、先日、2人の尊い命が、シャイン・オン・プログラムとともに、空へ旅立ちました。3歳の男の子が亡くなる1週間前に、その子を囲んで、お母様、お父様、おばあ様、主治医、看護師、心理士でクリスマスの絵を作りました。タイラー基金からのささやかな画材が、ご家族による手作りのクリスマスプレゼントへと変身しました。12歳の男の子は音楽を聴くことが大好きだったので、リクエストに応じて、タイラー基金からCDプレーヤーとCDを貸し出し、心理士と一緒にベッドサイドで聴きました。「これ、ずっと聴きたかったんです」と目を輝かせて、そのCDを繰り返し聴いた後、彼は亡くなりました。
子どもたちは何度でも、命の輝きを私たちの目の前に見せてくれます。病気だから助けてほしいなどと聞いたことがありません。むしろ、生きている喜びと楽しみを一緒に分かち合いたいと、周りにいる医師、看護師、保育士の隙間の時間を窺って、知恵を絞って遊びを創り出しています。タイラー基金は、子どもたちが輝くことで、ご家族、医療者、現場に関わるすべての人たちに幸せの連鎖が広がっていくことを目指して、今後も取り組んでいきます。
(プライバシーの都合上、一部子どもの情報を変更させていただいている場合がございます。ご理解ください。)
船木聡美
